消費者庁が「SNSで広告投稿すると報酬がもらえる」とエステで勧誘する事業者への注意喚起
消費者庁は、エステサロンを無料体験で訪れた際「SNSで広告を投稿すると報酬がもらえる」と勧誘する事業者に関する注意喚起を10月24日に出した。高額な加盟金を支払って投稿しても報酬はなく、事業者と連絡が取れなくなったとする相談が多く寄せられ、同庁が調査。2社が消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(不実告知)を行っていた、と確認した。
2社は、株式会社ライフパートナーズ(東京都港区南青山5-17-2、内田勉・代表)と株式会社NEOマーケティング(東京都渋谷区宇田川町36-3、奥村健太・代表)。美容系予約アプリや友人から、無料で施術してくれるエステサロンがあるという情報を得た消費者がサロンを予約して来店すると、店員に「月1万円がもらえる副業がある。やってみないか」と勧誘される。
無料エステ体験のサロンは「Beauty Salon Reve」か「Reve Beauty Salon」(東京都渋谷区)、「Beauty Advance Room Tie」(千葉市中央区)。勧誘された消費者は、次回詳しく説明すると言われて再来店すると、月1回SNSなら何でもよく、(消費者の)「LINE」に届く広告を載せると1万円もらえる▽SNSに載せるにはPRエージェント加盟金が必要になる、と説明される。
PRエージェント加盟金は150万円で、分割払いのためとしてクレジット会社に5年で総額222万円支払う申込書を記入することになる。しかし、指示通り投稿しても報酬はなく、事業者と連絡が付かない。消費者庁は、無料体験、お試し施術をきっかけにした勧誘に用心するとともに、高額支払いの長期クレジット契約を求められる場合は注意するよう呼び掛けている。
引用元:Yahoo!ニュース
消費者庁の注意喚起内容とは?
2024年10月、消費者庁は「SNSで広告を投稿すると報酬が得られる」と勧誘を行う一部のエステ事業者について、消費者に注意喚起を行いました。無料体験をエサに店舗へ来店した消費者に対し、「SNSで投稿するだけで月1万円の報酬が得られる副業がある」として勧誘し、最終的には高額な加盟金を支払わせる手口が問題視されています。
消費者庁の発表によると、これらの勧誘は主に美容系予約アプリや友人からの紹介を通じて行われ、東京都の「Beauty Salon Reve」や「Reve Beauty Salon」、千葉市の「Beauty Advance Room Tie」などが関わっています。来店後、消費者に「広告のSNS投稿で月々報酬が得られる」と副業を持ち掛け、後日再度訪問した際には、「LINEに届く広告をSNSに載せるだけで1万円もらえる」などと勧められます。さらに、SNSへの投稿を行うにはPRエージェントへの加盟が必要だとされ、約150万円の加盟金を支払う契約書にサインさせられるケースも少なくありません。
契約後、消費者が指示通りSNSに投稿しても報酬が支払われず、事業者と連絡が途絶えるなどの相談が相次ぎ、消費者庁は不正勧誘の疑いがあると判断しました。消費者庁は「無料体験から始まる高額契約の勧誘に警戒し、特にSNS投稿にかかる加盟金や長期契約については慎重に検討するように」と警鐘を鳴らしています。
消費者を狙う不正勧誘手法
今回の事例で浮き彫りとなったのは、SNS広告を使った副業を装い、高額な加盟金を消費者に支払わせる巧妙な勧誘手法です。無料のエステ体験を入り口にして「広告投稿で報酬が得られる」という利益を強調する話が展開されますが、実際には報酬が支払われず、事業者と連絡が取れなくなるといった問題が多発しています。
多くの被害者は「SNSでの広告投稿が収入に直結する」と説明され、「月々1万円がもらえる」という具体的な数字を提示されることで手軽な副業のように見せかけられるのが特徴です。また、エステサロンというリラックスできる場が信頼感を演出しており、無料体験によって「得をしている」という印象を抱かせる心理的な誘導も行われています。
さらに、勧誘の最終段階で提示される「PRエージェントの加盟金」は約150万円にも及び、分割払いを利用して総額222万円の負担が消費者にのしかかるように設計されています。契約時には、クレジット会社を利用することで即時の大きな支払いがないように見せかける一方、契約が成立した後は消費者が多額の負担を抱え込むことになります。こうした手口は、あたかも消費者に利益が生まれるかのような「不実告知」に該当する可能性があり、消費者庁は事業者の行為が「消費者の利益を不当に害するおそれ」があると指摘しています。
この手法が多くの消費者を引きつける背景には、SNS上で手軽に副収入が得られるという時代の流れに乗った勧誘内容があります。消費者が気軽に受けやすい「副業」や「SNSの活用」といったテーマが悪用されており、今後も同様の被害が発生する可能性が懸念されます。
事業者側の法的リスクと今後の注意点
今回の消費者庁による調査では、エステサロンでの「SNS広告で副収入が得られる」という不実告知が消費者に誤解を与え、消費者の利益を不当に害する可能性があるとされました。これにより、事業者は景品表示法や特定商取引法などの観点から法的リスクを抱えることになります。特に、景品表示法では消費者に不当な利益を期待させる表示が禁止されており、違反が認められると措置命令や課徴金が課されることもあります。
まず、今回のようなケースでは、SNS投稿による副業で得られる「報酬」や「加盟金」についての説明が明確で正確である必要があります。たとえば、報酬が確実にもらえるといった保証がないにもかかわらず、そのような表現を用いることは「不実告知」と見なされる可能性が高く、法令違反となりえます。また、消費者が契約時に不利益を理解できるよう情報を正確かつ適切に提供することも事業者には求められます。
さらに、今回の事案では無料体験を勧誘の入り口として利用している点も問題視されています。消費者がエステを受けた後に副業勧誘が行われるため、最初から勧誘が目的であることが消費者に伝わっていない場合もあるのです。こうした手法は、特定商取引法の「事前説明義務」や「誇大広告」の規制に触れるおそれがあります。こうした法令違反が認められた場合、業務停止命令や刑事罰が科される可能性もあるため、事業者は適正な手法での勧誘や広告の透明性を保つことが必要です。
今後、事業者が法令を順守しつつ消費者との信頼関係を構築するためには、以下のようなポイントに注意することが重要です。
- 利益や報酬に関する誤解を与えないように説明する
- 契約内容や料金体系を消費者が理解できるよう丁寧に説明する
- 無理な勧誘を控え、消費者の自由な意思決定を尊重する
- 無料体験を利用した勧誘であっても、事前に目的を明確に伝える
こうした適正なビジネス慣行が守られることで、事業者にとっても信頼性が高まり、消費者に対しても安全なサービス提供が可能になります。
消費者が勧誘トラブルを回避するには
消費者が勧誘トラブルを避けるためには、事前に勧誘の手法やリスクについて知っておくことが重要です。特に今回のような「無料体験」を入り口とした副業勧誘には注意が必要です。以下に、具体的な注意点と対策をまとめます。
- 高額な支払いが発生する契約には慎重になる
エステの体験後に勧誘される「副業」や「SNS投稿での報酬」について話が出た場合、高額な加盟金や長期的な支払いを求められる可能性があります。月々の収入が保証されていない場合には、契約を急ぐのではなく、まず冷静に考える時間を持つことが大切です。また、契約内容を十分理解するまで安易にサインしないようにしましょう。 - 報酬の確実性を確認する
SNS投稿で報酬が得られるという説明を受けた際は、その報酬が本当に支払われるのか、明確な根拠を確認することが重要です。説明があいまいだったり、過剰な利益を強調される場合は、信頼性が低い可能性が高いです。 - 無料体験後の勧誘には警戒心を持つ
無料体験を経て勧誘されるケースでは、当初の目的が「副業勧誘」であることが消費者に伝えられていない場合が多く見られます。「得をしている」と感じさせる場面では冷静さを保ち、必要に応じて周囲の人や消費生活センターに相談することを心掛けましょう。 - 長期の支払い契約についてのリスクを理解する
加盟金を分割払いにして契約を進めるケースでは、最終的に支払総額が契約金額より大幅に上がることがあります。分割契約では、5年やそれ以上の長期の負担を伴うケースもあるため、今後の負担を把握し、自分にとって無理がないか慎重に検討しましょう。 - トラブル時の相談窓口を知っておく
万が一、契約後に疑問や不安が生じた場合には、消費生活センターや国民生活センターに相談することで適切なアドバイスを受けることができます。契約内容が不明確なまま勧誘されたと感じる場合も、早めの相談がトラブルを未然に防ぐ助けになります。
こうした注意を守りながら、適切な情報収集と冷静な判断を行うことで、勧誘トラブルを回避することが可能です。特に「無料」や「手軽」といった言葉に惑わされず、疑問があればすぐに確認するようにしましょう。
まとめ
今回の消費者庁による注意喚起は、無料体験を利用した勧誘のリスクやSNSを活用した副業詐欺の危険性について多くの消費者に警鐘を鳴らすものでした。SNSでの投稿による副収入を装った手法が流行する中、こうした勧誘が消費者に不当な不利益をもたらす可能性が高いことが改めて明らかになりました。特に、消費者にとって分かりやすい「無料体験」「SNS投稿」といった手段を利用しつつ、実際には多額の加盟金を支払わせ、報酬が支払われないまま連絡が取れなくなる手口は悪質なビジネス慣行といえます。
このような勧誘手法が広まる背景には、副収入やSNSでの活躍を期待する消費者心理も関係しています。消費者にとっては、勧誘に対するリテラシーを高め、不審な点があれば周囲に相談することが欠かせません。また、事業者側にも、透明性と適正な手法でのビジネスを行うことが求められています。消費者に誤解を与えない広告や説明を徹底することで、消費者との信頼関係が築かれ、健全な市場環境の維持にもつながるでしょう。
今後、消費者庁や消費生活センターは引き続き、不適切な勧誘方法への監視を強化し、消費者保護に努めるとされています。事業者が適切な情報提供と法令順守を徹底することで、健全な市場が守られ、消費者が安心してサービスを利用できる環境が広がることが期待されます。
この記事から学んでおきたい関連知識
近年、SNSを利用した副業の勧誘が増加する中で、消費者庁はエステサロンでの無料体験を装った不正勧誘について注意喚起を行いました。
無料でエステを体験した後に「SNSで広告を投稿すれば報酬がもらえる」と誘われ、高額な加盟金を支払わされる消費者が後を絶ちません。消費者庁の調査で、報酬が支払われないばかりか、事業者と連絡が取れなくなるケースが多発していることが確認され、問題の根深さが浮き彫りとなっています。
本記事では、消費者庁の発表内容や問題点、事業者が今後気を付けるべき点について解説します。
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