薬機法広告ラボ

商品名がなくても安心できない!成分広告で注意すべきポイントを解説!

広告は、商品の魅力を伝えるための最も効果的な手段のひとつです。しかし、適切な規制の理解なしに広告を作成すると、意図せずに法規制に抵触する可能性があります。

特に、「商品名を記載しなければ問題ない」という誤解がある「成分広告」は要注意です。成分広告とは、特定の商品名を明示せず、商品の成分やその効果だけを紹介する形式の広告のことです。

一見すると、成分広告は法規制の対象外に思えますが、実はそう単純ではありません。消費者がその広告をどのように認識するかが規制対象か否かを左右します。そのため、成分広告を作成する際は、慎重に内容を検討しなければなりません。

この記事では、成分広告の規制要件や注意点、さらに具体的な事例を挙げながら、リスクを最小化する方法について解説します。

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成分広告の規制要件とリスク

成分広告を適切に運用するためには、まず規制の基本を理解することが重要です。

広告に関する主要な法律である薬機法健康増進法では、「広告」と判断される条件が定められています。この規制に違反すると、行政指導や罰則の対象となるため注意が必要です。

広告と判断される3つの要件

薬機法および健康増進法では、次の3つの要件を満たすものを「広告」と判断し、規制しています。

  1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  2. 特定の商品名が明示されていること
  3. 一般人が認識できる状態であること

この3要件に基づくと、「商品名がなければ広告ではない」と考える人もいるでしょう。

しかし、消費者が広告内容をどのように受け取るかが判断基準となるため、商品名が記載されていなくても広告とみなされる場合があります

消費者の認識が重視される理由

広告において「消費者目線」が最も重視されるのは、広告を制作した側の意図よりも、消費者が受け取る印象が判断基準になるためです。

例えば、商品名が書かれていなくても、以下のようなケースでは消費者が特定の商品を想起し、規制対象とされることがあります。

  • 商品のパンフレットやサンプルとの同梱
  • 商品と同じ成分を強調した広告の同送
  • 独自成分を用いた場合(その成分が特定の商品やメーカーを強く想起させる場合)

たとえ商品名を伏せていても、消費者が「この広告はあの商品を指している」と認識する場合、行政から広告と判断され、薬機法違反や健康増進法違反とみなされるリスクがあります

タイミングによる規制リスク

さらに、成分広告をどのタイミングで提供するかも重要です。例えば、以下のような状況は特に注意が必要です。

  • 商品を購入した直後に成分広告を送る
    消費者が商品と成分広告を結びつけてしまう可能性が高いため、広告とみなされやすい。
  • 商品購入後、短期間で成分広告を送付する
    例えば同日や翌日など、時間的な近さが「一連の広告活動」として解釈されるリスクがあります。

一方、あまりにも時間を空けすぎると、消費者がその成分広告を意味ある情報として受け取らない可能性があります。

そのため、現場では概ね1週間程度の間隔を空けることが暗黙のルールとされていますが、これは明文化されたルールではなく、あくまで目安に過ぎません

広告とみなされるケースとは?

成分広告は「商品名が記載されていなければ大丈夫」という誤解を抱きがちですが、消費者がその広告をどのように認識するかが、規制対象かどうかを決定する大きなポイントです。

ここでは、実際に広告とみなされるケースをいくつか挙げて解説します。

商品との同梱やパンフレットの同送

成分広告そのものに商品名が記載されていなくても、該当商品と同梱されていた場合、消費者はその広告を商品の説明と捉えがちです。

例えば、以下のような状況が該当します。

  • サプリメントのパッケージと一緒に、該当成分の効果を説明するリーフレットを送付する。
  • 健康食品のカタログに、商品の詳細は記載せず、成分に関する特長だけを強調するページを掲載する。

このような場合、商品と成分広告を一体として認識されるため、広告と判断され、規制対象になる可能性があります

商品購入後のタイミングに注意が必要

商品購入直後や短期間のうちに成分広告を送付することも問題となる場合があります。消費者は商品を手にした記憶が鮮明なため、成分広告の内容をその商品に結び付けて捉える可能性が高いです。

例えば、次のような例がリスクとなります。

  • 購入した商品の納品書に、成分広告の資料を添付する。
  • 商品が届いた翌日に成分広告を送付する。

行政は「一連の広告活動」として解釈する傾向があるため、時期が近い場合、商品との結びつきを避けるのは難しくなります。

独自成分が特定の商品やメーカーを連想させる

独自開発の成分や、他社が使っていない特異な成分名が広告に使用される場合、その成分が特定の商品やメーカーを強く連想させる可能性があります。特に、その成分名がブランド名や商品名に含まれている場合は要注意です。

例えば、以下のようなケースがあります。

  • 広告内で紹介される成分名が、実際の商品名やブランド名に類似している。
  • その成分を利用しているのが特定メーカーだけである。

この場合、消費者は広告を見た瞬間に「この商品だ」と認識しやすくなり、商品名を記載していなくても広告とみなされることがあります。

ウェブサイトや書籍とのリンク

ウェブサイトや書籍などに成分広告を掲載し、その近くに商品の販売ページや問い合わせ先へのリンクが記載されている場合、広告と判断される可能性があります。

例えば、以下の状況が該当します。

  • 成分広告のページに、商品の購入ページへのリンクが掲載されている。
  • 成分についての説明をしているブログ記事内に、販売業者の連絡先や商品情報が記載されている。

このような場合、成分広告と商品情報が一体と認識され、景品表示法や健康増進法上の「表示」に該当するリスクがあります

成分広告に体験談が含まれている

成分広告内に体験談を掲載することも、特定の商品を連想させる要因となります。体験談は多くの場合、実際の効果や使用感に基づいて書かれるため、消費者に商品を想起させやすい要素です。

特に以下の場合は注意が必要です。

  • 広告内に「成分を摂取した結果、健康状態が改善した」といった具体的なエピソードが書かれている。
  • 成分広告の体験談が、明らかに自社商品に関連している内容になっている。

体験談が含まれていることで、消費者が広告内容を自社商品と結び付けるリスクが高まります。

ここではよくある成分広告のNG例について紹介させていただきました。これらのNG行為を行ってしまうことで、措置命令や課徴金納付命令といった罰則を科せられる可能性もあるので気を付けましょう。

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景品表示法における注意点

成分広告を扱う際には、薬機法や健康増進法だけでなく、景品表示法(景表法)の規制についても十分に配慮する必要があります

景表法は、消費者に誤解を与える広告や表示を規制し、適正な取引を確保することを目的としています。特に、「事実でない表示」や「消費者を誤認させる表示」が問題視されます。

景品表示法における「表示」の定義

景表法が規制する「表示」とは、以下の3つの条件を満たすものを指します。

  1. 顧客を誘引するための手段として用いられる
  2. 事業者が自社の供給する商品やサービスの内容を説明する
  3. その他、内閣総理大臣が指定するもの

これらの条件を満たす表示は、消費者の誤解を招く恐れがある場合に規制対象となります。

商品名がなくても「表示」に該当する場合

景表法では、商品名が明示されていない場合でも、消費者が特定の商品を連想するような状況であれば「表示」として認定されることがあります

例えば、以下のようなケースです。

  • 成分広告が掲載された冊子に、商品の販売元や問い合わせ先が記載されている。
  • 健康保持増進効果等を強調する広告の近くに、販売ページへのリンクが配置されている。
  • 成分広告とともに、商品のサンプルが提供される。

先述でも説明した広告と見なされるケースと似ていますが、これらの要素が組み合わさることで、成分広告が商品の購入を誘引する意図があるものと判断されるリスクが高まります

消費者庁が示す成分広告の注意点

消費者庁が発表した「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項」には、成分広告について具体的な注意点が記載されています。この中で特に重要なのは、以下の部分です。

商品名を広告等において表示しない場合であっても、広告等における説明などによって特定の商品に誘引するような事情が認められるときは、景品表示法及び健康増進法上の「表示」に該当する。

引用元:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について

さらに具体例として、以下のケースが挙げられています。

  1. 健康効果に関する書籍や冊子、ウェブサイトの近くに販売業者の連絡先やリンクがある
    消費者が広告を通じて商品の購入に至ると認識される。
  2. 問い合わせ先に連絡した消費者に、商品情報や無料サンプルが提供される
    成分広告と商品情報が一体化したとみなされる。
  3. 成分名が商品名やブランド名と一致している
    例えば、独自開発成分の名称がそのまま商品名として使用されている場合。

体験談のリスク

成分広告において、消費者の体験談を掲載することは、優良誤認表示のリスクを伴います。

例えば、以下のような表現は問題となる可能性があります。

  • 「この成分を摂取したおかげで健康診断の数値が改善しました!」
  • 「この成分で肌が若返ったと実感しています!」

体験談は一見効果的に見えますが、科学的根拠(エビデンス)がない場合、虚偽または誇張と判断される恐れがあります。さらに、特定の商品を連想させる内容であれば、成分広告としての役割を超え、規制対象となる可能性が高まります。

成分広告で避けるべき表現と違反にならないための対策

成分広告を作成する際には、法律違反を避けるだけでなく、消費者に誤解を与えない表現を心がけることが重要です。この章では、特に避けるべき表現や、リスクを軽減するための具体的な対応策を紹介します。

避けるべき表現

成分広告が規制の対象になる主な理由のひとつが、特定の商品や効果を消費者に強く連想させる表現です。以下のような表現は特に注意が必要です。

①「絶対的な効果」を謳う表現
  • 「○○を摂取すれば必ず健康になれる」
  • 「この成分で100%効果を実感」

根拠が不足している場合、薬機法や景表法に違反する可能性があります。

②体験談を利用した過剰な宣伝
  • 「この成分のおかげで10キロ痩せました!」
  • 「○○を飲み始めたら病気が治りました」

体験談が科学的根拠に基づかない場合、優良誤認に該当する恐れがあります。

③特定商品を想起させる表現
  • 「当社独自の○○成分」
  • 「○○配合商品で効果抜群!」

独自成分や特徴的な成分名が商品名やブランド名と一致している場合、消費者が特定の製品を連想する可能性が高いです。

④健康効果を断定する表現
  • 「○○を摂取すると免疫力が上がる」
  • 「この成分が病気の予防に役立つ」

健康効果を断定する場合は、エビデンスが必要であり、ない場合は違反となります。

広告違反にならないための対策

成分広告を安全に運用するためには、法規制を遵守しつつ、誤解を避ける工夫を取り入れる必要があります。以下は、推奨される具体的な対応策です。

①事実に基づいた表現を使用する
  • 科学的な根拠に基づくデータを活用し、効果を誇張せずに伝える。
    例:「○○成分には、健康な状態をサポートする可能性があるとされています。」
②独自成分の名称を慎重に選ぶ
  • 独自成分の名前が商品名やブランド名と一致しないように工夫する。
  • 消費者に特定の商品を連想させる表現を避ける。
③体験談を使用する際の注意
  • 体験談を利用する場合は、過剰表現を避け、個人の感想であることを明示する。
    例:「個人の感想であり、効果を保証するものではありません。」
④エビデンスを必ず用意する
  • 健康効果や成分の特長を訴求する場合、科学的なデータや研究結果を添付する。
  • データが過去のものでないか、信頼性のある研究か確認する。
広告のデザインにも配慮する
  • 成分広告を単独で提供するようにし、商品のパンフレットやリンクなどと同梱・併設しない。
  • 商品購入直後のタイミングで広告を送らないように計画する。

まとめ

成分広告を安全に運用するためには、「消費者がどう受け取るか」を最優先に考えることが重要です。商品名を記載しなくても、内容やタイミング次第で広告とみなされ、法規制の対象になる可能性があります。

規制を正確に理解し、事実に基づいた情報を提供することが大切です。また、広告の作成には専門家のチェックを取り入れ、誤解を招く表現を避ける工夫を忘れないでください。成分広告は慎重に運用し、消費者の信頼を損なわない表現を心がけましょう。

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