Contents
適正な比較広告の要件
比較広告とは、自社製品の性能等を他社製品との間で比較し、優位性をうたう広告ですが、当時、景品表示法を管轄していた公正取引委員会が昭和62年に「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(比較広告ガイドライン)を公表し、そこで適正な比較広告の要件をはじめ、その他注意事項などについての考え方を示しています。(平成28年4月1日に、消費者庁により改正されています。 )
比較広告の大きなポイント
比較広告が不当表示とならないようにするためには、一般消費者に誤認を与えないようにするため、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
(1) 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。
(2) 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。
(3) 比較の方法が公正であること。
それぞれ(1)~(3)は、下記のように解釈していきます。
(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
客観的に実証されている数値や事実を摘示して比較する場合には、通常、一般消費者が誤認することはないため可能。
実証が必要な事項の範囲は、比較広告で主張する事項の範囲
- 比較する商品等の特性について確立された方法がある場合にはその確立された方法で行う。
- それが無い場合には社会通念上及び経験則上妥当と考えられる方法によって、主張しようとする事実が存在すると認識できる程度に行う。
- 国公立の試験研究機関等の公的機関、中立的な立場で調査、研究を行う民間機関等、調査を行った機関が広告主とは関係のない第三者が望ましい。
- 広告主と関係ない第三者が行ったものでなくても、その実証方法等が妥当なものである限り可能。
- 公的機関が公表している数値や事実及び比較対象商品等を供給する事業者がパンフレットなどで公表し、かつ、客観的に信頼できるものと認められる数値や事実は当該数値や事実を実証されているものとして取り扱い可能。
客観的に実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用する場合には、通常、一般消費者が誤認することはないので可能とする。
(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
- 実証されている事実の範囲内で引用すること
- 調査結果の一部を引用する場合には、調査結果の趣旨に沿って引用すること
- 調査機関、調査時点、調査場所等の調査方法に関するデータを【広告中に表示することが適当】である。
- 調査方法を適切に説明できる限り、広告スペース等の関係から、これらデータの【省略は可能】。
- 調査機関や調査時点等をあえて表示せず、調査の客観性や調査時点等について一般消費者に誤認を生じさせることとなるような場合は不可。
- 引用データの著作権に注意。
(3)比較の方法が公正であること
一般に、比較の対象として、競争関係にあるどのような商品等を選択しても可能とする。
- 社会通念上又は取引通念上、同等のものとして認識されていないものと比較し、あたかも同等のものとの比較であるかのように表示する場合は不可。
- 製造又は販売が中止されている商品等と比較しているにもかかわらず、あたかも現在製造又は販売されている商品等との比較であるかのように表示する場合は不可。
- 一般に、ある事項について比較する場合、これに付随する他の短所を表示しなかったとしても特に問題ない。
- 表示を義務付けられており、又は通常表示されている事項であつて、主張する長所と不離一体の関係にある短所について、これを殊更表示しなかったり、明りょうに表示しなかったりするような場合は不可。
適正な比較広告の要件は、
(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
(3)比較の方法が公正であること
の3つであることを押さえておきましょう。
問題となる広告の具体例
問題となる比較広告の具体例としては、
×「この成分を含有し商品化したのは日本で当社だけ」と表示したが、実際は他社でも同様の商品を販売していた。
×web上の料金比較で,自社が最も安いように表示したが実は自社に不利となる他社の割引サービスを除外して比較していた。
×新聞折り込みチラシで、「グルコサミン配合サプリメント最安値」と表示していたが、実際は公正な価格調査をしておらず根拠が無かった。
が挙げられ、上記のような表現は“不当な比較広告”に該当する可能性があります。
比較広告の大前提として
“競争事業者の商品との比較そのものについて禁止し制限するものではない”
ではありますが、あくまでも
一般消費者が商品を選択するに当たって、同種の商品の品質や取引条件についての特徴を適切に比較し得るための具体的情報を提供するもの
です。
“自社の製品を他社のものより良く見せる”というものではありません。
単に競争事業者又はその商品を中傷し又は誹謗するものは、一般消費者の適正な商品選択を阻害する表示にあたり、不当表示に該当するおそれがありますので注意が必要です。
要件を満たせばどの分野においても比較広告は可能なのか
では、先述した3つの要件をすべて満たすのであれば、化粧品や医薬部外品、健康食品、機能性表示食品、雑貨においても比較広告は可能なのかを整理してみましょう。
化粧品、医薬部外品の場合
化粧品や医薬部外品の場合は「医薬品等適正広告基準」で以下のように 定められています。
医薬品等適正広告基準
第4(基準)
9 他社の製品の誹謗広告の制限
医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない。
この「9」の留意事項として
<共通>
(1)誹謗広告について
本項に抵触する表現例としては、次のようなものがある。
①他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合
例:「他社の口紅は流行おくれのものばかりである。」
②他社の製品の内容について事実を表現した場合
例:「どこでもまだ××式製造方法です。」(2)「比較広告」について
① 漠然と比較する場合であっても、本基準第4の3(5)「効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止」に抵触するおそれがあるため注意すること。
② 製品同士の比較広告を行う場合は、自社製品の範囲で、その対照製品の名称を明示する場合に限定し、明示的、暗示的を問わず他社製品との比較広告は行わないこと。この場合でも説明不足にならないよう十分に注意すること。
とあります。
よって、化粧品等薬事法に係るルールとして、化粧品では誹謗及び比較することは不可という事になります。特定の会社の名前を挙げたり、また一部を伏せ字にしたりすることはもちろん不可ですし、A社、B社等といった形で見せる方法も不可となります。
そしてそれだけではなく、『漠然と比較する場合』も制限がされています。
例えば、「一般のコラーゲン」「これまでのヒアルロン酸」といった“一般的な”“これまでの”という表現を用いることも不可になる可能性があるということも重要なポイントです。
化粧品等の適正広告ガイドライン
併せて、日本化粧品工業会(旧 日本化粧品工業連合会)「化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版」を参照してみましょう。
【F10 他社の製品の誹謗広告の制限】という章において、ひぼうに該当する表現例が紹介されております。
その中に『他社のものの内容について事実を表現した場合』として「一般の洗顔料では落としきれなかったメイクまで。」というものが例として挙げられており、“他社の製品や既存カテゴリー等を比較の対象に広告を行うと、他社ひぼうにつながり易いので注意すること”との注意コメントが付与されております。
“注意すること”というレベルではありますが、例文では不可ということで挙げられておりますので、基本、「一般の」という漠然とした比較であったとしても表現としては不可ということになる可能性があります。
他にも下記のようなものが例として考えられます。
- 弊社のコラーゲンは、今までのコラーゲンとは違います。
- かつてない(今までにない)○○!
このような表現も、上記に抵触する恐れがあります。
医薬品等広告講習会
また、毎年秋頃に東京都によって行われる医薬品等広告講習会においても下記のような事例が発表されております。
「肌トラブルの原因○○(成分名)を含んでいません」
こちらも、成分○○を含む製品に対しての他社誹謗につながる恐れがあります。(成分○○を含んでいる化粧品は肌トラブルを招く・・・という意味になるため)併せて注意が必要です。
化粧品でも自社商品の比較であれば可能
では、化粧品等において比較広告は全くできないのでしょうか。医薬品等適正広告基準あるように事実に基づき“自社製品との比較”であれば可能です。
例えば「今までの洗顔料では落とせなかったメイク汚れまでスッキリ!」という表現があった場合おいて、そのまま使用すると他社比較に繋がり、かつ、効能効果等又は安全性を保証する表現とも解釈され不可になってしまう可能性がありますが、
「今までの洗顔料(※)では落とせなかったメイク汚れまでスッキリ!」※当社従来品 ◎◎◎(商品名)と比較という記載を行いきちんと説明を行う事で、可能となります。
健康食品や機能性表示食品、雑貨の場合
健康食品、機能性表示食品、雑貨は上記のように『医薬品等適正広告基準』 そのものの制限は受けません。
ですので、比較広告そのものを禁止するものではなく正しいやり方を行うのであれば「可能」と言えます。
例えば、健康食品の比較広告の例として「含有成分量の比較」を良く見受けます。
これがまずは比較広告ガイドラインにおける(1)~(3)の要件を満たしているのであれば手法としてはアリと判断できます。但し、試験・調査によって得られた結果で、専門家、専門団体もしくは 専門機関の見解、または学術文献であるなど、その根拠が“客観的なもの”である必要があります。
例えば「※当社調べ」といった注釈のある自社データの場合であればそれが客観的なものであるかがポイントとなります。自社のデータも根拠となりえますが、評価として自社の都合の良いデータとなるように評価されたもの等客観的に実証されているとはみなされない場合もありますので、注意が必要です。
尚、機能性表示食品については、
一般社団法人 健康食品産業協議会 公益社団法人 日本通信販売協会 「機能性表示食品」適正広告自主基準(第2版)
において
(5)比較広告について 比較広告を行う場合は、以下の点に十分に配慮すること。
1)比較広告を行う場合は、機能性表示食品の届出表示の内容に基づき、かつ、景表法や不正競争防止法等の関連法規に従うこと。
2)他社商品を誹謗する広告は行わないこと。
という記載がされていますので参考にしてください。
おわりに、広告媒体においては掲載他社への配慮やモラル等問題より比較広告に関し自主的に規制が行われることもありますので、その場合には、各広告媒体社の判断を仰いでください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事から学んでおきたい関連知識
他社と差別化を図るにあたって「比較」を行う事はよくありますが、比較広告にはルールがあり好き勝手に行ってしまうと不適切と判断される場合があります。今回はそんな“比較広告”の注意点についてまとめます。
【トライアル可!】法令を遵守した訴求力の高い広告を作成する >