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景品表示法とは?
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、商品やサービスの売買にあたり、事業者による不当な景品類の提供や不当な表示を防止し、消費者の自主的かつ合理的な選択を守る法律となっています。
景品表示法で規制の対象となるのは、事業者から一般消費者に向けたすべての景品類や表示です。そのため、いわゆるBtoCの事業を行っている企業だけでなく、一般消費者へ向けた商品・サービスを提供する個人、非営利団体、学校法人や宗教法人などによる景品類・表示の内容も規制対象となっています。
また、「景品類」とは一般的に商品についてくるオマケや特典、懸賞やくじ引きで当たる賞品などをイメージいただけると言葉の意味が掴みやすいかと思います。そして「表示」とはあらゆる広告表示のことを指します。
チラシや商品パッケージ、店頭のPOPや実演販売などのアナログなものから、Web広告バナーやインフルエンサーに依頼した投稿(いわゆる「案件」)のようなデジタルなものまで、およそ広告と思われるものはすべてが「表示」に該当します。また、コールセンターでのセールストークなどの音声によるものも表示の一種とされます。
景品表示法では、過大な景品提供や虚偽の表示につられて、消費者が不本意な取引をすることのないようにあらゆるルールが定められています。もし違反した場合には、さまざまな罰則が科せられます。
景品表示法
第二節 措置命令
第七条 内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。
一 当該違反行為をした事業者
二 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
三 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
四 当該違反行為をした事業者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者
2(略)(課徴金納付命令)
引用元:e-GOV
第八条 事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
一・二(略)
2・3(略)
景品表示法による規制内容は大きく2点
さて、ここまで景品表示法の概要について駆け足でご説明しました。ここからは、景品表示法の規制内容についてお伝えします。
景品表示法の規制内容は、主に「不当な表示の禁止」「景品類の制限及び禁止」の2点となっています。この「不当な表示の禁止」「景品類の制限及び禁止」とは具体的にどのようなことを指しているのかを見ていきましょう。
※注:今回ご紹介するのは大枠の内容です。実際にはこちらでご紹介しきれないほどの細かな規定や例外があります。より詳しく確認されたい場合は、消費者庁のHP内「目的別に知りたい方へ」のページを是非ご覧ください。
不当な表示の禁止
ここでは「不当な表示の禁止」について解説します。はじめに、景品表示法上の「表示」が指すものを確認してみましょう。
景品表示法で規制される「表示」については、下記の3点を満たすものと景品表示法第2条第4項において定義されています。
(1)顧客を誘引するための手段として、(2)事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う(3)広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するものをいう
引用元:表示に関するQ&A | 消費者庁
これらの表示が、実際の商品よりも著しく良いものであると誤認(誤解、勘違い)させるものである場合は「優良誤認表示」、実際よりも著しく有利(お得)な取引であると誤認させる「有利誤認表示」、それら以外にもステルスマーケティングなどの消費者の誤認を招く表示を「その他誤認されるおそれのある表示」として、規制しています。
優良誤認表示
「優良誤認表示」については、景品表示法第5条第1号の下記が該当します。
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
ざっくりまとめると、「実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示」が優良誤認表示となります。「本当はそういうものなら買わなかったのに…」と思うような表示、と言うこともできるでしょう。
たとえば「これを飲めば誰でも1ヵ月で10kg痩せられる!」と広告するサプリメントが、実際には1ヵ月飲んでも10kg減量できないサプリメントだった場合には、実際のものよりも著しく優良なサプリメントであると消費者に誤認させる「優良誤認表示」をしてしまったことになります。
有利誤認表示
「優良誤認表示」については、景品表示法第5条第2号の下記が該当します。
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
ざっくりまとめると、「商品やサービスの価格などの取引条件を、実際よりも著しくお得であると誤認させる表示」が有利誤認表示となります。お得感を誤認させる表示とも言えるでしょう。
たとえば「通常価格5,000円の商品が今ならなんと500円!!お買い得です!」という広告を出しておきながら、実際には常時500円で販売されているものだったという場合には、取引が著しくお得だと消費者に誤認させる「有利誤認表示」をしてしまったことになります。
その他誤認されるおそれのある表示
「その他誤認されるおそれのある表示」については、景品表示法第5条第3号の下記が該当します。
前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
この「内閣総理大臣が指定するもの」については、現時点では7つあります。
・無果汁の清涼飲料水等についての表示
・商品の原産国に関する不当な表示
・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
・不動産のおとり広告に関する表示
・おとり広告に関する表示
・有料老人ホームに関する不当な表示
・一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示引用元:表示に関するQ&A | 消費者庁
このうち「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」はいわゆるステルスマーケティング規制であり、2023年10月から施行されました。このことからもわかるように、時代や実態にあわせて不当表示とされるものが検討され、規制の対象となっています。
景品類の制限及び禁止
次に、景品表示法の規制対象のうち「景品類の制限及び禁止」について説明します。
景品表示法で規制対象となる「景品類」とは下記の3点を満たすものと景品表示法第2条第3項において定義されています。
(1)顧客を誘引するための手段として、(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する(3)物品、金銭その他の経済上の利益
引用元:景品規制の概要 | 消費者庁
たとえば、お菓子についてくるカードや、商品の購入者のみが応募できる懸賞の賞品、誰でも参加できる商店街のくじ引きで当たる賞品などが景品類とされます。
そして、景品表示法では過大景品の提供を防ぐため、景品自体の価格(景品価額)や、懸賞で複数ある賞のすべての景品をまとめた最高額などを、景品の提供の方法によって細かく定めています。
ここからは、景品類の提供方法の種類の中から「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」「業種別景品告示」について解説します。
一般懸賞
商品やサービスの利用者に対し、くじ等の偶然性や特定の行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」といいます。その中でも、次項で説明する「共同懸賞」以外のものは「一般懸賞」と呼ばれています。
一般懸賞の例としては、下記のようなものが挙げられます。
- 抽選やじゃんけんの結果によって賞品をプレゼントする
- 大量に流通している板チョコレートの中で、一部にのみ当たり券が入っているが、パッケージを開けなければ当たり券が入っているかはわからない場合
- クイズに正解した人にだけ商品をプレゼントする
- 釣り大会の優勝者に賞品をプレゼントする
ほかにも「商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供する」もので、共同懸賞に分類されないものは一般懸賞となります。
共同懸賞
懸賞の中でも、複数の事業者が参加して行う懸賞は「共同懸賞」となります。
例えば、下記のような場合が共同懸賞となります。
- 市町村など、一定区域の事業者の相当多数が共同で実施する懸賞
- 商店街やショッピングビルのなどが実施する懸賞
- 「電気まつり」等、一定の地域の同業者の相当多数が共同で実施する懸賞
ここでいう「相当多数」には「○○店舗以上」といった具体的な規定はなく、その都度、その地域や業種における競争の状況などを勘案して判断するものとされています。
なお、共同懸賞では景品類の限度額が一般懸賞よりも高く設定されていることが特徴です。そのため、一般懸賞よりも豪華な賞品を設定し、顧客を誘引することができます。
総付景品
一般消費者に対して、懸賞ではない方法で提供される景品類は「総付景品」とされています。「ベタ付け景品」などと呼ばれるものも総付景品です。
例えば、下記のような場合が総付景品となります。
- お店に来てくれた人全員に粗品プレゼント
- お菓子を買うともれなくついてくるオマケのシール
- ○○円以上購入してくれたお客様全員にノベルティプレゼント
「オマケ」「特典」など、何かの商品やサービスを購入した際に、もれなく提供される景品類は、ほとんど総付景品と考えられます。また、商品の購入の有無にかかわらず、来店者全員に先着順で何かをプレゼントする場合の景品も総付景品と考えられます。
ちなみに、正常な商習慣に照らしてアフターサービスと認められるもの(家電の一定期間の保証、不動産の補修や点検など)、付属品(お弁当についてくる割りばし、必要な限度内の商品の梱包材など)など、景品類ではない(=景品規制の対象とならない)と見なされる例外もいくつかありますので、詳しくは消費者庁のHPなどをご確認ください。
業種別景品告示
特定の業種については、業界ごとの実情を反映させながら、一般的な景品規制とは異なる内容の景品規制が、景品表示法第4条の規定に基づき、告示により指定されています。これは「業種別景品告示」と呼ばれています。
今のところ、下記の4つの業種について業種別景品告示が出ています。
- 新聞業
- 雑誌業
- 不動産業
- 医療用医薬品業、医療機器業及び衛生検査所業の各業種
内容について、たとえば新聞業の告示を読んでみますと、懸賞の景品の最高額や総額の上限などが、ここまでにご紹介した一般懸賞・共同懸賞などとは一部異なることや、総付景品など懸賞によらずに提供する景品の価格などが詳細に規定されていることがわかります。ほかにも、各業界の実情に即した規制内容が告示されています。
景品表示法は、消費者に対して誤解を招く広告表示や不当な景品提供を防ぐための法律で、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「不当な景品提供」の3つが禁止されています。
景品表示法に違反した場合の罰則(行政処分)
景品表示法違反による行政処分は、大きく4つあります。ここからは景品表示法に違反した場合の行政処分や罰則から「行政指導」「措置命令」「課徴金納付命令」「直罰規定」をご紹介します。
行政指導
行政指導は、景品表示法に違反する恐れがある行為に対して、事業者に改善を促す措置です。
違反が軽微な場合や即時の是正が可能な場合に適用されます。具体的には誤解を招く広告表示や不当な景品提供の疑いがある場合に、消費者庁や都道府県の担当機関が指導を行います。
行政指導の内容は以下の通りです。
- 改善指示:誤解を招く広告表示や不当な景品提供の是正を指示します。
- 警告:将来的に違反行為に繋がる可能性がある行為に対して警告を発します。
- 是正処置:具体的な改善策を提示し、事業者にその実行を求めます。
行政指導は報道発表されないため、企業の信用への直接的な影響は少ないですが、指導に従わない場合は、後に措置命令や課徴金納付命令が発せられる可能性があります。
措置命令
措置命令は、景品表示法に違反した事業者に対して、消費者庁や都道府県の担当機関が発する強制的な命令です。この命令は、消費者に対して誤認を排除し、違反行為の再発防止を目的としています。
措置命令が発せられると、事業者は以下の対応を求められます。
- 一般消費者に対して誤認を排除すること
- 再発防止策を講じること
- 違反行為を取り止めること
措置命令に従わない場合、事業者の体表者には2年以下の懲役または300万円以下の罰金、事業者自体には最大3億円の罰金が科せられることがあります。また、措置命令は報道発表されるため、企業の信頼失墜にも繋がります。
課徴金納付命令
課徴金納付命令は、景品表示法に違反した事業者に対して、消費者庁が違反行為に対する経済的な制裁として発する命令です。この命令は、消費者に対する不当な表示や景品提供に対して、違反の抑止と再発防止を図ることを目的としています。
課徴金納付命令が発せられる際のプロセスは以下の通りです。
- 違反行為の確認:優良誤認表示や有利誤認表示などの違反行為が確認されます。
- 弁明の機会:事業者には、違反行為について弁明する機械が与えられます。
- 課徴金の決定:違反行為に係る商品の売上額3%を乗じた金額が課徴金として賦課されます。
課徴金は、違反行為の重大さや影響の大きさに応じて決定され、事業者にとっては経済的な負担となるだけでなく、企業の信用にも大きな影響を与えます。
直罰規定
2024年10月1日より、景品表示法に違反したときの罰則として「直罰規定」が加わりました。第48条として、故意に優良誤認表示・有利誤認表示に対して、100万円以下の罰金を科す直罰が新設されたのです。
これにより、悪質な違反行為に対しても行政指導や措置命令・課徴金納付命令などの手続きを踏むことなく、即時に罰則を適用できるようになりました。
景品表示法の違反行為に対する抑止力が強まり、より一層消費者が守られることが期待されています。一方で、直罰規定が導入されたばかりである現時点では、どういった表示内容が「悪質な違反行為」と見なされるのかは明らかにされていません。そのため、事業者側はより一層消費者へ配慮した広告作りをしていくことが求められます。
景品表示法違反に対する行政処分には、措置命令、行政指導、課徴金納付命令、直罰規定の4つがあります。
措置命令は違反行為の再発防止を目的とした強制命令で、従わない場合は罰金や懲役の対象となります。行政指導は、違反の恐れがある場合に改善を促す措置で、軽微な違反時に適用されます。課徴金納付命令は、違反行為に対する経済的な制裁で、売上額に基づいて課徴金が決まります。
2024年10月より確約手続きが導入
ここまでは景品表示法に違反した場合の行政処分や罰則についてお伝えしてきましたが、2024年10月1日からもうひとつ、違反時の選択肢が増えました。景品表示法第4条や第5条に違反する可能性がある行為に対して、事業者の自主的な解決を促す「確約手続」が導入されたのです。
消費者庁は、違反の疑いがある行為について、確約手続が適当だと判断した場合、その事業者に対して確約計画の申請が可能である旨を通知できます。通知を受けた事業者は、問題解決のための確約計画を作成し、消費者庁に申請することが可能です。
計画の認定基準については、違反被疑行為を取り止めること、一般消費者への周知徹底、違反被疑行為及び同種の行為の再発防止措置、計画履行状況の報告などが必要な措置とされています。また、消費者への返金などによる被害回復、違反行為の要因となった取引先の変更や契約の見直し、表示内容に即した取引条件の変更なども有益な措置とされています。
この計画が認定されれば、原則として措置命令や課徴金納付命令は行われません。また、消費者庁は手続の透明性や予見可能性を確保するために、確約手続に関する運用基準も定めています。
罰則が下されるまでの流れ
景品表示法に違反した場合に科せられる行政処分や罰則についてご紹介してきましたが、ここからはそれぞれの罰則の権限の所在や流れを紹介します。
例)優良誤認表示が発覚して措置命令と課徴金納付命令が下されるケース
- 行政の職権探知や消費者からの情報提供により、違反と思しき表示が見つかる
↓ - 公正取引委員会や事業所管大臣等、消費者庁、都道府県の担当機関が連携し、違反と思しき表示について調査を行う。
↓ - 消費者庁や都道府県の担当機関から、違反行為をした事業者に連絡。表示の内容について違反していると思われる箇所を指摘したうえで、事業者へ弁明の機会を与える(この時点で既に申し開きができないほど調査が進んでいることもあるとか…)
↓ - 弁明を経てもなお、措置命令および課徴金納付命令に関する要件を満たしている
↓ - 措置命令および課徴金納付命令が命じられる
上記はあくまで消費者庁の公表している資料から見た調査手順をもとにした例です。2024年10月からは確約手続や直罰規定が導入されているため、こうしたオーソドックスな流ればかりだけではなくなるかもしれません。
景品表示法の違反事例を3つご紹介
景品表示法の罰則やそこに至る流れがわかったところで、ここからは景品表示法の違反事例を見ていきましょう。
最近の景品表示法の違反事例はほとんど消費者庁のHP上で確認できるようになっています。実際の事例の中でどのような行為がどのような違反とみなされたのかを知り、是非これからの施策に生かしていただけたら幸いです。
あの有名なジムで ~ステマ&優良誤認
1つ目にご紹介するのは2024年8月8日、有名なジムの広告における不当表示に対して措置命令が下された事例です。
本件では、ジムの店舗で供給されるサービスについて優良誤認表示と、ステルスマーケティングが行われたことが確認されました。具体的には、サービスが24時間利用可能と誤解を招く表示や、第三者の投稿を広告と明示せずに使用したことが問題視されました。
これにより、消費者庁は再発防止策の実施と一般消費者への周知を命じました。有名な企業なだけに話題性も大きく、その分だけ厳しい目を向けられ、企業としての信頼も損なってしまう結果となりました。さらに、現時点では数少ないステマ規制での措置命令であることも大きな注目を浴びた要因だったと思われます。
「お得」への道のりが険しすぎた ~有利誤認表示
2つ目にご紹介するのは、とある銀行のクレジットカード・デビットカードのサービスについて有利誤認表示が認められた事例です。
この事例における事業者に対する景品表示法に基づく措置命令は、クレジットカードやデビットカードの利用に関連する「最大20%キャッシュバック」キャンペーンに関するものです。広告では、あたかも新規入会者が一定の条件を満たせば20%のキャッシュバックを受けられるかのように表示されていましたが、実際には例外条件が多く、全ての消費者に適用されるわけではありませんでした。
この表示が有利誤認にあたり、消費者庁は事業者に対して是正と再発防止を命じました。こちらも有名な企業による表示に対する有利誤認表示でした。こういったことの積み重ねで消費者にも漠然とした不信感が募っていくのだと思います。
コンプガチャショック ~「カード合わせの手法」の禁止
3つ目にご紹介するのは、景品規制に違反している手法が一時的に流行してしまった事例です。
2012年頃、オンラインゲームにおける、いわゆるガチャ(ランダムでアイテムが排出される機構)の提供方法のうち、「コンプリートガチャ」と言われる手法は違法となることが消費者庁から明言されました。
コンプリートガチャは、目的となるレアアイテムを手に入れるために、ガチャによってランダムで排出される複数の特定アイテムを全種類揃えなければならないという手法のことです。これが景品表示法で禁じられている「カード合わせの手法」に抵触するということが名言されました。
この件によってコンプリートガチャを実施した事業者らに措置命令や課徴金納付命令が科せられることはなかったようですが、消費者庁がコンプガチャを問題視していることが報じられた途端、コンプリートガチャが実施されていたソーシャルゲーム関連会社の株が軒並み下落したことも話題になりました。あらかじめ法律を知っておくことでこのような事態は回避できたかもしれません。
景品表示法に違反しないための対策
景品表示法は、消費者保護を目的とした重要な法律であり、違反すれば罰則や企業の信頼低下につながります。だからこそ、ここまででご紹介してきたように、過大景品の提供や誤解を招く広告表示など、違反行為は企業の信頼を大きく損なう可能性があるため、適切な対策が不可欠といえます。
ここからは、違反を避けるために知っておくべき事例や、専門家への依頼、消費者庁の動向チェックなど、具体的な防止策について解説します。
①景品表示法の違反事例を学ぶ
景品表示法の違反を防ぐには、まず過去の違反事例から学ぶことが有効です。
たとえば、クレジットカード会社が「最大○○円キャッシュバック」と宣伝しながら、適用条件を曖昧に記載した事例がありました。消費者が誤解する恐れのある不明瞭な条件設定は、景品表示法違反となり、消費者庁から措置命令が下されています。また、実際に提供される景品の価値が広告よりも著しく低い場合も問題です。
このような事例から、自社のキャンペーンや広告が消費者に誤解を与えないか、細かく確認することが重要です。
違反事例は「反面教師」として、自社が同様のミスを避けるために役立ちます。特に大きなキャンペーンを打つ際には、過去の事例をしっかりとリサーチし、問題のない形で提供できるようにしましょう。
②専門家に頼る
景品表示法のルールは複雑であり、特に大規模なキャンペーンを実施する場合は、専門家の助言を受けることが推奨されます。
例えば、法律の専門家である弁護士や、景品表示法に詳しい薬事コンサルタントに相談することで、違反のリスクを大幅に減らすことができます。これらの専門家は、法律の最新の解釈や適用方法を理解しており、広告や景品提供に関する表現が問題ないかを的確に判断してくれます。
また、法改正や新しい規制が施行された際にも、適切な対応策を提示してもらえるため、企業は安心してキャンペーンを進めることができます。特に医薬品や健康食品など、規制が厳しい分野では、専門家のサポートが不可欠です。
違反が発覚した際の罰則は大きいため、予防的に専門家に相談することは、企業のリスク管理としても非常に有効です。
③消費者庁の動向をチェック
景品表示法に違反しないためには、消費者庁の最新の動向を常に把握しておくことが重要です。
消費者庁は、違反行為に対する措置命令の内容などを都度発表しており、その内容をチェックすることで、今後厳しく取り締まられそうな表示方法や広告表現の傾向をなんとなく掴める場合もあります。また、消費者庁の長官が行う記者会見や、消費者関連のセミナーでの発言内容も有益な情報源です。
例えば、特定の業界や商品の広告手法が問題視されている場合、それに関連するガイドラインが厳格化される可能性があります。これらの情報を事前に把握することで、予防的な対策を講じ、違反リスクを最小限に抑えることができます。
企業としては、消費者庁が提供する情報やセミナーなどを積極的に活用し、法令順守の姿勢を常に保つことが、ブランドイメージの保護にもつながります。
まとめ
今回は、景品表示法の規制内容と、違反時の罰則等について、事例も交えながら解説しました。内容をまとめます。
- 景品表示法は景品類の不当な提供と、広告などの不当表示を禁止し、消費者を守る法律
- お菓子のオマケや懸賞のプレゼントなどの提供方法や価格も景品表示法で決まっている
- お得だとウソをついたり(有利誤認)、実際よりも良いものだと誤解させる(優良誤認)表示は不当表示!
- 違反したら行政処分だけでなく刑事罰となる場合も!
- 違反しないよう対策が大切!事例に学び、時には専門家に頼ることも大事
今回紹介した景品規制や不当表示についての内容は景品表示法のほんの一部であり、中にはたくさんの例外や「これも違法になっちゃうの?」というような決まりもあります。勉強していく中でたくさんの疑問が出てくると思いますが、違反しないためには常に消費者ファーストで誠実な取引を心がけることが大切です。
この記事から学んでおきたい関連知識
消費者に対して、商品等を販売している方であれば、誰しもが必ず関わってくるのが「景品表示法」です。この法律は、消費者に誤解を与える広告表示や過大な景品提供を防ぎ、公正な市場競争を促進するために存在します。
もし違反してしまうと、措置命令や課徴金納付命令といった罰則が行政から科せられます。違反内容はメディアで報道されることがあり、ブランドイメージの低下にも繋がりかねないため、必ず守っておきたい法律です。
そこで、本記事では、景品表示法の基本的な内容や違反が発覚した場合の罰則、事業者が取るべき対策について詳しく解説します。
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