「在庫わずか」「ニセのお客様の声」など消費者欺く「ダークパターン」対策、官民で始まる…被害1兆円の試算も
消費者を欺いて定期購入契約を結ばせたり、時間がないことを示して焦らせて商品を購入させたりするネット上の仕掛け「ダークパターン」の被害を防ぐため、IT企業や政府が対応に乗り出した。被害額は1兆円を超えるとの試算もあり、官民で対策を進める。
IT企業のインターネットイニシアティブ(IIJ・東京)が8月、ネット利用者500人にアンケートを取ったところ、78・2%が「ダークパターンという言葉や手法を知っていた」と回答。30・2%が金銭的な被害に遭っていたこともわかった。同社は国内の被害額が1兆~1兆6000億円と推計している。
同社などは先月、一般社団法人「ダークパターン対策協会」の設立を公表した。消費者問題に詳しい大学教授や弁護士が理事を務め、消費者庁や総務省も協力していくという。
年明けにダークパターンにあたる不適切な事例を示し、来年7月にもこれを排除したサイトを運営している企業を認定する仕組みをつくる。認定企業はウェブ用のロゴマークの提供を受け、サイトに掲載することで消費者に安全性をアピールできる。
協会理事で、龍谷大のカライスコス・アントニオス教授(民法)は「消費者に、安心して使えるサイトを判断する基準を提供したい。結果的に消費者被害をもたらすサイトが減る」と強調する。
日本ではダークパターンの定義が定まっておらず、直接的に規制する法律はない。消費者庁は今年、初めてダークパターンの実態調査に乗り出した。具体的な事例や被害状況などを調べ、年度内にも結果を取りまとめる方針だ。
海外では、ダークパターンの対策が進んでいる。欧州連合(EU)は、「デジタルサービス法」で消費者を欺くウェブデザインを禁止している。
消費者問題に詳しい岡田淳弁護士は「日本では、業者にも消費者にもダークパターンが問題だという意識がまだ十分に浸透していない。ネットでは過度に購入意欲をあおるケースも多く、どういう事例がなぜ問題なのか理解を深める必要がある」としている。
◆ ダークパターン =経済協力開発機構(OECD)の2022年の報告書では、解約を困難にする「妨害型」や、「在庫僅少」などとうその表示をする「緊急性扇動型」など七つの類型を示している。日本では明確な定義はないが、特定商取引法に違反する可能性がある悪質なケースも確認されている。
引用元:読売新聞オンライン
Contents
ダークパターンとは
現代のデジタル社会では、オンラインでの商品購入や契約が日常的になっています。
その一方で、消費者の心理を巧みに利用して不利益な契約を結ばせたり、不要な商品を購入させたりする「ダークパターン」と呼ばれる手法が問題視されています。
ダークパターンとは何か
ダークパターンとは、一見するとユーザーに利便性を提供しているように見えながら、実際には誤解や混乱を引き起こし、意図的に消費者に不利な選択をさせるデザインや手法を指します。
例えば、「定期購入が条件なのに、その情報を小さな文字で目立たなくする」や「商品が残りわずかであると見せかけて購入を急がせる」などが典型的な例です。
これらの手法は、購入を決定する際に心理的なプレッシャーをかけることで、冷静な判断を妨げます。こうした仕掛けが原因で、日本国内における被害額は1兆円を超えるとも試算されており、その深刻さが浮き彫りになっています。
日本の現状と対策の遅れ
日本では、ダークパターンに関する明確な定義や直接的な規制がありません。
そのため、消費者にとってこれが「違法」なのか「不適切」なのかがわかりにくい状況です。また、多くの企業もこうした手法が問題であるという認識を十分に持っておらず、結果として消費者被害が広がっています。
しかし、最近では官民一体となった対策が進みつつあります。2023年には、IT企業や専門家、政府が連携し「ダークパターン対策協会」が設立されました。さらに、消費者庁は具体的な事例や被害状況を調査しており、2024年度内には結果がまとめられる予定です。
グローバルな視点で見た課題
日本での対応はまだ途上ですが、海外ではすでに規制が進んでいます。
特に欧州連合(EU)では「デジタルサービス法」により、消費者を欺くウェブデザインが明確に禁止されています。こうした国際的な流れを受け、日本国内でも対策が急務となっているのです。
ダークパターンの手口と事例
ダークパターンは、多くの消費者が知らず知らずのうちに影響を受けてしまう仕組みです。
経済協力開発機構(OECD)はこれを7つの類型に分類しており、それぞれが異なる形で消費者を誤導します。本章では、代表的な手口と具体的な事例を紹介します。
ダークパターンの7つの類型
消費者に気付かれないように不利な情報を隠す手法です。
- 例: 定期購入が条件であることを目立たない小文字で記載。
緊急性を煽ることで、消費者に即決を迫る手口です。
- 例: 「残り1個!今すぐ購入を!」といった表示が実際の在庫状況と無関係に表示される。
本来の目的から消費者の注意をそらし、誤った行動を取らせる手法。
- 例: 「無料トライアル」と表示しながら、自動的に有料課金が始まる設定を隠す。
他人が行動していることを強調し、消費者の心理に影響を与える方法です。
- 例: 「今、この商品を25人が閲覧中!」という表示で購買意欲を刺激。
商品やサービスの希少性を強調し、購入を急がせる手法。
- 例: 「在庫僅少」と表示し、実際には在庫が十分にある場合。
消費者が特定の行動を取るのを意図的に難しくする設計。
- 例: 解約手続きを複雑化し、ボタンを隠すなどして手続きが困難にされる。
消費者が特定の選択肢を選ばざるを得ないようにする方法。
- 例: 「同意しない」選択肢がないCookie同意ポップアップ。
国内外の事例
- サブスクリプションサービスの解約問題
国内の一部の動画配信サービスでは、解約ボタンが多くの画面を辿らないと見つからないケースが報告されています。その結果、 多くのユーザーが「面倒だから」と契約を続けてしまいます。
- 在庫僅少の虚偽表示
eコマースサイトで「残り○個」と表示されていた商品が、翌日も同じ在庫数を表示する事例があるとされています。
- EUでのダークパターン規制違反
欧州連合では、ある大手旅行予約サイトが「限定プラン」として表示していた内容が虚偽であるとして罰金を科されたケースがあります。その結果、デジタルサービス法に基づき、数百万ユーロの罰金が課されました。
ダークパターンが消費者に与える影響
これらの手口は、消費者に心理的な負担を強いるだけでなく、金銭的被害や情報漏洩のリスクを高める要因となります。特にスニーキングやオブストラクションは、消費者が自分の権利を行使することを困難にし、長期的な損失を招く可能性が高いのです。
現在進んでいるダークパターン対策
ダークパターンは消費者に深刻な被害をもたらすだけでなく、企業の信頼やブランド価値を損なうリスクを孕んでいます。こうした背景から、近年、政府や企業が本格的な対策に乗り出しています。本章では、日本国内外の動向を整理し、今後の展望を探ります。
官民で進む対策
日本では、2023年に「ダークパターン対策協会」が設立され、消費者保護の取り組みが強化されています。この協会には、消費者問題に詳しい大学教授や弁護士が理事として参加し、消費者庁や総務省と連携して対策を推進しています。
主な取り組みとしては以下のようなものがあります。
①不適切な事例の収集と共有
消費者庁は2024年度内に、ダークパターンの具体的な事例や被害状況の調査結果を公表する予定です。これにより、企業と消費者の双方が問題を明確に認識できるようになります。
②認定制度の導入
2024年7月を目標に、ダークパターンを排除したウェブサイトを認定する仕組みが設けられる予定です。この認定を受けた企業は、「安心サイト」を示すロゴマークを取得できるため、消費者への信頼性を高められるでしょう。
まとめ
ダークパターンとは、ユーザーの心理を巧みに利用し、不利な選択を迫るウェブデザインや手法を指します。日本国内での被害額は1兆円を超えるとされ、多くの消費者が被害を受けている状況です。
代表的な手口には、緊急性を煽る「アージェンシー」や解約を難しくする「オブストラクション」などがあります。国内ではまだ法規制が整っていない一方、海外ではEUがデジタルサービス法で規制を進めています。
現在、日本でも「ダークパターン対策協会」の設立や認定制度の導入が進行中です。官民が連携して透明性の高いウェブ環境を構築することで、消費者被害の軽減と企業の信頼向上を目指しています。
このニュースから学んでおきたい知識
ネットショッピングやオンライン契約の便利さが進化する一方で、消費者の心理を巧みに利用し、不利益をもたらす「ダークパターン」という手法が問題視されています。
「在庫僅少」や「解約困難」といったデザインで消費者を誤導し、意図せず不利な条件を受け入れさせられるケースが後を絶ちません。
被害額は国内で1兆円を超えるとも試算されるなか、企業や政府はこの問題への対策を本格化させています。本記事では、ダークパターンの具体例や問題点、そして企業が今後取るべき対策について詳しく解説します。
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