糖質カット炊飯器 表示に「根拠なし」 昨年とは別の4社に措置命令
「56%糖質カット」などとうたう「糖質カット炊飯器」の表示に根拠がなかったとして、消費者庁は8日、販売元4社に対し、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止などを求める措置命令を出したと発表した。命令は1~7日付。
4社は、ニトリ(札幌市)、Areti(アレティ、東京都中央区)、リソウジャパン(同)、AINX(アイネクス)(同港区)。
消費者庁によると、4社は、2023年2月~同年9月の間、自社ウェブサイトなどで、通常炊飯と同様の炊きあがりで、33~59%糖質がカットされるかのように表示した。
消費者庁は表示の根拠となる資料の提出を要求。提出された資料は、通常の炊飯と糖質カット炊飯をしたご飯100グラムあたりの糖質量を比べたものだったが、炊くのに多くの水を使う糖質カット炊飯では、炊きあがったご飯100グラムに含まれる水分量も多くなり、含まれる糖質の割合が低くなっているなどとして、合理的な根拠を示す資料とは認めなかった。
取材に対し、Aretiは「すでに表示を見直した。関係者の皆様にはおわび申し上げる」、ニトリ、リソウジャパン、AINXは「再発防止につとめる」などとしている。
消費者庁は昨年10月にも同様の違反で別の4社に対して措置命令を出している。
引用元:朝日新聞DIGITAL
Contents
糖質カット炊飯器が人気の理由と健康志向の高まり
糖質制限や糖質オフの食生活が注目される中、「糖質カット炊飯器」と呼ばれる製品が人気を集めてきました。糖質制限は、ダイエットや血糖値のコントロールに効果があるとされており、そのため糖質をカットすることで健康をサポートする炊飯器は、特に健康志向の高い消費者に支持されています。食生活の改善を目指す人々にとって、主食である「ご飯」の糖質を少しでも減らせるのは魅力的でしょう。
こうした背景から、各メーカーは独自の「糖質カット率」を表示し、消費者の注目を集めていました。しかし、表示されていた「糖質カット率」に根拠がないと判断され、今回のような措置命令に至る事態となっています。なぜこの表示が問題視されたのか、そして事業者は今後どのような対策を講じるべきなのか、順を追って見ていきましょう。
消費者庁が指摘した「糖質カット率」の根拠不足と措置命令の内容
2024年11月、消費者庁は「糖質カット炊飯器」に関する広告表示の根拠が不足しているとして、ニトリやAreti、リソウジャパン、AINXの4社に対し、景品表示法違反(優良誤認)で措置命令を出しました。措置命令の対象となったのは、各社の公式サイトや広告で「糖質が33~59%カットされる」とうたわれていた製品の表示です。これらの表示に対し消費者庁は、実際に糖質カットの効果があるかを裏付ける「合理的な根拠」がなかったとしています。
消費者庁が求めた根拠資料として、各社は通常の炊飯と「糖質カット炊飯器」を用いた炊飯での糖質量を比較したデータを提出しました。しかし、これらのデータでは、炊飯時に多くの水を使用することで「炊きあがったご飯100グラム中の糖質が減少した」と見えるものであり、消費者庁は「実際に糖質がカットされたとはいえない」と指摘。これにより、企業側が主張する「糖質カット率」に対して合理的な根拠を示す資料としては認められませんでした。
各社は措置命令を受け、表示の見直しや再発防止のための取り組みを行うと表明していますが、今回の措置命令により、糖質カット炊飯器への信頼が揺らぐ結果となりました。
炊飯器の「糖質カット」表示に潜む問題点
今回の糖質カット炊飯器の表示問題で注目されたのは、実際に「糖質がカットされた」と言えるのかという点です。一般的に糖質カットをうたう炊飯器は、炊飯中にご飯の中に含まれる糖質を一定量取り除くかのように見えます。しかし、消費者庁が問題視したのは、この効果が「水分による錯覚」に過ぎない点でした。
糖質カット炊飯器の多くは通常の炊飯と比べて水の量を多く使用し、そのため炊きあがったご飯の水分量も多くなります。水分量が多くなることで、100グラムあたりの糖質量が減少して見えますが、実際に含まれる糖質総量はほとんど変わっていないのです。このような場合、糖質そのものが除去されたわけではないため、消費者に誤解を与える表現であるとして、景品表示法違反が適用されました。
消費者庁が求めた「合理的な根拠資料」とは、実際にご飯から糖質を除去するプロセスが明確に示されたデータでした。しかし、今回提出された資料では「糖質の除去」とは言えず、「水分による希釈」が結果的に「糖質が減少したかのように見える」だけに過ぎなかったため、不適切な表示と判断されたのです。
景品表示法に抵触した具体的な部分は、「優良誤認表示」です。これらの炊飯器は、「糖質カット」効果を誇大に宣伝し、その効果に合理的な根拠を示す資料が不足していました。
優良誤認表示:
商品の品質や性能を実際以上に優れていると誤認させる表示。各社は「糖質カット効果」を強調し、科学的な根拠を十分に示さずに消費者に誤解を与えました。
これらの違反により、消費者庁は各社に対し、再発防止策の徹底と表示の削除を求める措置命令を出しました。
今回の問題が消費者に与える影響と「糖質カット」表示の課題
今回の「糖質カット炊飯器」の表示問題は、健康を気遣う消費者にとって深刻な影響をもたらしています。「糖質カット」を期待して製品を購入した消費者が、実際には十分な効果が得られない可能性が高いからです。糖質制限や低糖質ダイエットを実践している人にとって、ご飯の糖質が33~59%もカットされるという表示は非常に魅力的です。しかし、その表示に根拠がないとすれば、消費者は「減らしたはずの糖質」を摂取してしまうことになります。
また、こうした表示の問題は、企業の信頼性を大きく損なうリスクを伴います。消費者が企業の表示に対して疑念を抱くようになると、糖質カット炊飯器のみならず、企業が提供する他の製品やブランド全体への信頼が低下する可能性もあります。この信頼の低下は、企業の売り上げやブランドイメージに大きな影響を与えるでしょう。
さらに、今後、消費者が「糖質カット」などの表示に対して慎重になることで、正しい糖質カット技術を持つ製品やサービスに対する不信感が広がる可能性も考えられます。表示や広告における透明性の欠如が、市場全体にも影響を与えかねないため、企業は正確で誤解を招かない情報を発信する責任があるといえます。
今後、事業者が注意すべきポイント
今回の措置命令を踏まえ、企業が再発防止のために取り組むべき重要なポイントがいくつか挙げられます。まず第一に、景品表示法に対する理解と順守の徹底です。景品表示法は、消費者に誤解を与える可能性のある広告や表示を規制しており、製品表示に「根拠となる合理的な資料」が求められます。そのため、製品の効果や特徴をうたう際には、科学的根拠や実証データを慎重に確認する必要があります。
また、企業は製品の開発段階から第三者機関によるデータの検証を取り入れることも効果的です。特に健康関連製品においては、自社でのデータ検証に加え、信頼性のある第三者機関のサポートを受けることで、データの客観性と信用性を確保できます。こうした取り組みによって、消費者に対して透明性の高い表示が提供でき、ブランドの信頼性向上にもつながります。
さらに、企業のマーケティング部門や広告部門に対する教育も重要です。正確な表示内容と消費者保護の重要性を理解した上で、広告や表示内容を制作する姿勢が求められます。消費者に「誤解を与えない表現」を心がけ、実際に製品が提供する価値を正確に伝えるための工夫を行うことが、長期的なブランド価値の向上に寄与するでしょう。
消費者庁の見解
消費者庁は、これらの表示に対して4社から提出された資料が合理的な根拠を示すものではないと判断し、一般消費者への誤解を招くとして、再発防止策の徹底を求めました。これにより、各社は自社ウェブサイトや販売プラットフォームから誤認を招く表示を削除し、再発防止に努めることが義務付けられました。
景品表示法違反は消費者保護の観点から厳しく取り締まられており、今回の措置命令は消費者の信頼を守るための重要な一歩とされています。消費者庁は引き続き、誤解を招く表示に対して厳しく対応していく方針を示しています。
▼糖質カット炊飯器の販売事業者 4 社に対する景品表示法に基づく措置命令について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036249/
まとめ
今回の「糖質カット炊飯器」表示問題を受けて、消費者が製品の表示に対して慎重になる必要性が改めて浮き彫りとなりました。消費者が健康のために安心して製品を選べる環境を提供するためには、企業が製品表示の透明性を高め、正確な情報を提供する責任が求められます。
一方、企業にとっても、消費者の信頼を損なうことなく製品の魅力を伝える方法を模索することが重要です。根拠のあるデータに基づいた正確な表示を行い、消費者に安心して使用してもらえる製品を提供することが、結果的に企業の信頼性向上やブランド価値の向上に直結するでしょう。また、消費者庁が推奨するガイドラインに基づいた表示を行うことが、長期的に見ても市場全体の健全性に寄与すると考えられます。
糖質カット炊飯器のような健康志向の製品市場は今後も拡大が期待される分野です。だからこそ、企業は正確な情報提供を徹底し、製品の品質を裏付けるエビデンスをしっかりと整備する必要があります。今後、消費者がより賢く製品を選べる市場が構築され、企業と消費者の双方にとって信頼の高い健全なマーケットの発展が望まれます。
近年、健康志向の高まりとともに、「糖質オフ」や「糖質カット」をうたう製品が数多く登場しています。中でも糖質カット炊飯器は、糖質を気にする消費者に向けた製品として注目を集めていました。
しかし、2024年11月、消費者庁は「糖質カット率」に根拠がないとして、複数の販売会社に景品表示法違反で措置命令を発表。これにより、一部の糖質カット炊飯器の広告表示に対する信頼性が大きく揺らぐ結果となりました。
本記事では、今回の措置命令の詳細とその背景、さらに企業が今後、表示に関して注意すべきポイントについて考察します。
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