訪問販売業者【株式会社イトケン】に対する行政処分について
九州経済産業局は、訪問販売業者である株式会社イトケン(本店所在地:福岡市東区)(以下「イトケン」といいます。)(注)に対し、令和7年3月25日、特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号。以下「特定商取引法」といいます。) 第8条第1項の規定に基づき、令和7年3月26日から令和7年6月25日までの3か月間、訪問販売に関する業務の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
(注)同名の別法人と間違えないよう法人所在地なども確認してください。
あわせて、九州経済産業局は、イトケンに対し、特定商取引法第7条第1項の規定に基づき、再発防止策を講ずるとともに、コンプライアンス体制を構築することなどを指示しました。
また、九州経済産業局は、イトケンの代表取締役である笹尾伸司(ささお しんじ)に対し、特定商取引法第8条の2第1項の規定に基づき、令和7年3月26日から令和7年6月25日までの3か月間、イトケンに対して前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含みます。)の禁止を命じました。
なお、本処分は、特定商取引法第69条第3項の規定に基づき、消費者庁長官の権限委任を受けた九州経済産業局長が実施したものです。
本件は、九州経済産業局と福岡県が連携して調査を行い、福岡県も令和7年3月25日付けでイトケンに対する特定商取引法に基づく業務停止命令(3か月)及び指示並びにイトケンの代表取締役に対する特定商取引法に基づく業務禁止命令(3か月)を行いました。
参照元:消費者庁HP(2025年3月26日より)
Contents
ニュースの概要
2025年3月26日、給湯管新設工事などを訪問販売で提供していた株式会社イトケン(以下、イトケン)に対し、特定商取引法違反(不実告知)を理由とする行政処分が下されました。
イトケンは、訪問販売により締結された役務提供契約について、本来であれば契約の解除が可能なクーリング・オフ制度に関し、消費者に対して「1年間内の2度目の契約は解約できない」といった虚偽の説明を行っていました。
この行為は、特定商取引法第6条に違反するものであり、消費者が契約をやめたいと考えた際に、本来持っている解約の権利を使えないと誤信させたという点で、重大な問題とされました。
さらにこの件に関し、福岡地方検察庁はイトケンおよび笹尾伸司代表取締役を特定商取引法違反の罪で略式起訴。同日、福岡簡易裁判所は両者に対し、それぞれ罰金20万円の略式命令を出しています。
訪問販売とは?
特定商取引法における取引類型の1つである「訪問販売」とは、事業者が消費者の自宅などを訪問し、契約の勧誘や締結を行う販売手法を指します。イトケンはこの形態で、給湯管新設工事の契約を取り交わしていました。
訪問販売は、消費者にとって予測しないタイミングでの勧誘となる可能性があるため、法律によって厳しく規制されています。
特に「クーリング・オフ制度」の正確な説明と、その尊重が事業者には義務付けられています。
行政処分の内容
本件では、イトケンに対し、特定商取引法違反(不実告知)を理由とする行政処分が下されました。
具体的な処分の内容は以下のとおりです。
イトケンは、以下の訪問販売に関する業務の一部を2025年3月26日から6月25日まで(3ヶ月間)停止するよう命じられました。
- 訪問販売における役務提供契約の勧誘をすること
- 申込みの受付をすること
- 契約の締結をすること
この停止は、法人の役員就任や実質的な支配を行うことも含まれます。つまり、名前だけ変えて別会社で同じような業務を行うこともできません。
この処分は、特定商取引法第8条の2に基づいており、違法行為に関与した法人の役員が再び同様の業務に関与することで、消費者保護に悪影響を及ぼすのを防ぐことが目的です。
業務の再開に向けた条件として、処分と併せて以下の是正措置が命じられました。
- 虚偽説明の原因調査と再発防止策の策定
「解約できない」といった虚偽の説明がなされたことを受け、その発生原因を調査し、再発防止策を講じること。 - コンプライアンス体制の構築と教育の徹底
業務再開前までに、役員や従業員に対して法令遵守の教育を徹底すること。 - 過去1年間の契約者への通知
2024年3月1日から2025年3月24日までに契約を締結した全ての消費者に対し、業務停止命令や指示の内容およびクーリング・オフ制度の権利について文書で通知し、その実施状況を行政に報告すること。
イトケンの代表取締役である笹尾伸司氏に対しても、法人とは別に個人への行政処分が下されました。
これは、彼が訪問販売に関する違法行為において主導的な役割を果たしていたと認定されたためです。
このように、法人だけでなく関係する経営陣個人にも責任が問われるのが、特定商取引法の特徴です。個人にも処分が下される理由については以下で解説します。
個人にも行政処分が下される理由
個人にも行政処分が下れる理由は以下の通りです。
- 「業務禁止命令」 は『業務の執行を決定する立場にあった者』『実質的に業務を支配する者』『業務の執行に関与した者』といった個人に対しても発出できることが明記されています。(第15条の2第2項)
- 違反した法人を行政処分しただけでは、悪質な経営者や役員が別の法人を新設し、再び同じ違法行為を繰り返す恐れがあるため、法人だけでなく、違法行為に関与した役員や実質的な経営者の個人に対しても処分(を出すことで、悪質な役員や経営者が一定期間その業界に関与できないようにし、実質的な規制効果を高める目的がある。(上の「業務停止命令」の部分と被りますが・・・)
- 特定商取引法の目的は『消費者被害の防止・被害の拡大防止』であるため、個人への処分によって違反行為の主体を業界から一定期間排除し、消費者被害を未然に防ぐ。
今後事業者が注意すべきポイント
今回のイトケンへの行政処分から、他の訪問販売業者やサービス提供事業者が学ぶべき教訓は多くあります。
以下の点を押さえておくことが、法令違反のリスク回避と顧客との信頼構築に不可欠です。
①クーリング・オフ制度の正確な理解と周知
クーリング・オフ制度は、訪問販売において訪問販売や電話勧誘販売等において契約を結んだ消費者が、契約書面を受け取った日を含めて8日以内(取引形態によって異なる)であれば一方的に契約を解除できる制度です。「解約はできません」「条件があります」など、虚偽の説明は禁止されています。
従業員教育で制度を正しく理解・説明できる体制を整えることが重要です。
②勧誘時の説明義務の徹底
契約内容やキャンセル可能期間などの説明は義務です。
消費者が誤解しないよう、書面と口頭の両方で丁寧に説明しましょう。
③コンプライアンス体制の整備
違反があった場合、会社だけでなく経営陣個人も処分対象になる可能性があります。
内部監査・マニュアル整備・社員研修を通じて、違反を防止する企業文化を育てる必要があります。
④過去契約者への対応も忘れずに
法令違反があった場合、過去の契約者に対しても通知義務が生じることがあります。
契約者リストの管理と、迅速な対応体制が求められます。
まとめ
株式会社イトケンは訪問販売での不適切な勧誘と、クーリング・オフ制度に関する虚偽説明により、業務停止命令と指示処分を受けました。さらに代表取締役個人にも処分が下され、法令違反の重大性が浮き彫りに。
訪問販売事業者は、消費者保護を重視し、法令遵守・コンプライアンス体制の整備、社員教育の徹底が求められます。違反は企業信用を大きく損なうリスクがあるため、日々の業務における適正な対応が不可欠です。
このニュースから学んでおきたい知識
給湯管新設工事などを訪問販売で行っていた株式会社イトケンが、特定商取引法違反により業務停止命令を受けました。
契約解除を妨げる虚偽の説明が問題視され、代表取締役個人にも処分が下されるという異例の展開に。訪問販売に関わる事業者にとって、法令遵守とコンプライアンス体制の整備がいかに重要かを改めて突きつける事例です。
本記事では、ニュースの概要を整理し、具体的に何が問題だったのかを解説するとともに、今後事業者が注意すべきポイントについて詳しく紹介します。
【リピーター多数!】広告表現に関する悩みを解決する >