消費者庁、初のステマ規制による措置命令
2024年6月7日、消費者庁は医療法人社団祐真会に対し、景品表示法に基づく初のステルスマーケティング(ステマ)規制による措置命令を発令しました。
祐真会が運営する「マチノマ大森内科クリニック」(東京都大田区)は、インフルエンザワクチン接種費用の割引を条件にGoogleマップへの高評価投稿を誘導。
この行為が消費者を誤解させるステマに該当すると判断されました。景品表示法は2023年10月に改正され、ステマが規制対象に追加されています。
引用元:ツギノジダイ
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そもそもステルスマーケティングとは?
ステルスマーケティング(ステマ)とは、広告であるにもかかわらず、その事実を消費者に明示せずに行うマーケティング手法です。通常の広告は、消費者がその情報が宣伝だと理解できるように表記されていますが、ステマでは、宣伝であることが意図的に隠されるため、消費者は情報を「自然な口コミ」や「第三者の意見」として認識してしまうことが多いのです。こうした手法は、消費者の購買意欲や選択に影響を与え、消費者に誤解を生じさせるリスクがあります。
2023年10月1日から、景品表示法に基づきステルスマーケティングは規制対象となりました。景品表示法では、消費者をだます表示や虚偽広告を禁止していますが、ステマもその一環として追加されたのです。特に、インターネット上での口コミやレビュー、SNS投稿など、第三者の「意見」のように見せかけた宣伝が問題視されています。
消費者庁によれば、「一般消費者が広告であることを判別できない」広告が規制対象となります。これは企業がインフルエンサーやレビュー投稿者に依頼して行う口コミも含まれ、評価の高い投稿やレビューの数を増やすために金銭や割引を条件に行われる場合は、広告表示が義務化されるケースが多いのです。
今回の祐真会の事例のように、クリニックや医療機関での口コミ評価誘導が規制対象に入ったことで、医療分野を含む幅広い業界でのマーケティング活動にも影響が及ぶことが予想されます。企業は今後、広告表示や口コミ管理の際、ステマ規制をしっかり理解し遵守することが求められます。
今回の事例が景品表示法に違反と判断された理由
今回の医療法人社団祐真会のケースでは、「Googleマップでの高評価口コミ投稿」を条件に割引を提供していた点が問題とされました。具体的には、インフルエンザワクチンの接種費用を割り引く代わりに、患者に対して「★★★★★」や「★★★★」の評価を投稿させていたことが、消費者庁によって「広告であると分かりにくい」と判断されたのです。
消費者庁の判断基準には、「一般消費者が事業者による表示であると判別することが困難であること」が含まれています。つまり、今回のように、クリニックが事業として促した高評価口コミが一般の自然な意見や感想に見えてしまうと、消費者が口コミを信じてしまい、適切な判断ができなくなるリスクがあると考えられます。
また、口コミ評価が「誘導されたものであるかどうか」が重要な判断要素です。割引や特典を条件に評価を求める行為は、消費者にとってその評価が広告であるかどうかが分かりにくく、クリニック側が評価の結果をコントロールしていることも広告として明示されるべきです。こうした口コミが多数集まることで、消費者が評価を見てクリニックを選ぶ際に、実際の評判とは異なる印象を受ける可能性が高まります。
さらに、消費者庁は「消費者の選択をゆがめるリスク」をも重視しています。今回のような評価誘導の取り組みは、一般の患者が純粋に投稿した口コミの信頼性を損ない、消費者にとっての公正な情報収集を妨げるため、規制の対象となったと考えられます。
とはいえ、決して投稿の謝礼に値引きをすることが、すべてステマに当たるわけではありません。具体的には下記で解説します。
投稿の謝礼に値引きすることがステマにならないことも?
消費者庁から出されている運用基準には、以下のような記載があります。
▼「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(抜粋)
2. 事業者が表示内容の決定に関与したとされないものについて
(1) (中略)
<引用元>https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_230328_03.pdf
オ ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合。
要するに、投稿内容について事業者は一切関与せず、評価の高低や内容に関わらず、謝礼としてクーポン等を提供するのであれば、ステマには当たらないと読めます。
ただし、相手がインフルエンサーなど、事業者との関係性により、敢えて事業者に有利な投稿をするような場合は、ステマと判断される恐れがあるので注意が必要です。
まとめますと、ステマかどうかを分けるポイントは主に次の2つです。
①内容への関与
②関係性
みなさまも日頃から気を付けていらっしゃると思いますが、今回の事例をきっかけに、ステマに当たらないか、今一度施策や表示を見直してみてください。
企業がステマ規制を順守するために気を付けるべきポイント
今回の措置命令を受け、企業がステマ規制に違反しないためには、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。以下に、具体的な対策を挙げます。
①広告であることを明示する
ステルスマーケティングの規制において、「広告であることが消費者に明確にわかること」は最も重要なポイントです。インフルエンサーや口コミ投稿者に依頼する際は、「PR」や「広告」などのタグを投稿に明示することが必要です。投稿内容が企業による宣伝であることが消費者にわかるようにし、口コミや評価を広告として公開する場合も同様に表示が求められます。
②利用者のレビューや評価に条件を付けない
祐真会の事例でも問題となったように、割引や特典を条件に高評価の口コミを依頼する行為は、ステマ規制に違反するリスクがあります。こうした条件付きの評価依頼は、消費者の実際の意見とは異なる内容を反映する可能性が高く、口コミの透明性や信頼性を損ないます。レビューや評価はあくまで利用者の自由意思に基づくものであるべきです。
③インターネット上の口コミ管理での透明性を確保する
企業が口コミやレビューを管理する場合、不自然な評価の誘導や、評価の操作は避けることが重要です。たとえば、低評価レビューを削除したり、特定の評価だけを促進したりする行為は、消費者庁からの調査対象になる可能性があります。顧客のフィードバックを公平に管理し、実際の評価がそのまま消費者の目に触れるように努めましょう。
④再発防止策を徹底する
今回の祐真会の措置命令を受け、企業は再発防止策にも積極的に取り組む必要があります。内部のチェック体制を強化し、広告表示の適切な管理方法を徹底することで、法令遵守の意識を高めることが重要です。ステマの違反リスクがないかを事前に検証する社内ルールや、定期的な社員教育を実施することで、ステマ規制を踏まえた透明性のあるマーケティングが可能となります。
これらのポイントを守りながら消費者の信頼を得ることで、企業としてのブランド価値も向上し、公正なマーケティングを通じて、信頼されるブランドとして成長できるでしょう。
まとめ
今回の消費者庁による措置命令は、企業に対して透明性のあるマーケティングがいかに重要かを改めて示しています。特に、消費者にとって口コミやレビューは、商品やサービスの選択において重要な判断材料です。そのため、広告であることを隠して評価を操作する行為は、消費者を欺き、誤った判断をさせるリスクがあるといえます。
企業が信頼を保つためには、規制を順守し、消費者が信頼できる情報を提供する姿勢が不可欠です。今回のように、消費者に広告だとわからない形での評価誘導は、短期的には利益をもたらすかもしれませんが、信頼を失うことで長期的な損失を招くリスクも高まります。消費者庁がステマ規制を強化する背景には、こうした消費者の利益を守るための姿勢があるのです。
企業として、透明性を持ったマーケティング活動を行うことは、単に規制を守るというだけでなく、消費者からの信頼を築き、競争力を保つためにも重要です。今回の事例は、企業が自らの広告活動を見直し、公正で誠実な姿勢を示す機会と捉えるべきでしょう。信頼されるブランドを育てるためには、規制に対応するだけでなく、企業としての倫理観や社会的責任を持ってマーケティング活動を行うことが求められています。
2024年6月7日、消費者庁は医療法人社団祐真会に対して景品表示法に基づく措置命令を発表しました。今回の措置命令の内容は、祐真会が運営するクリニックに来院した患者に対し、Googleマップで「★★★★★」や「★★★★」といった高評価の口コミを投稿させ、その条件としてインフルエンザワクチン接種費用の割引を提示していたことです。こうした誘導による口コミ表示が、消費者に対して広告であるとわかりにくく、景品表示法が禁止するステルスマーケティング(ステマ)」に該当すると判断されました。
この行政処分は、2023年10月に施行された新しいステマ規制に基づく初の措置命令となり、消費者庁の取り組みが大きく注目を集めています。消費者庁は、今回の事例を通して、企業が口コミやレビューを通じて不適切な評価誘導を行うことに対する厳しい姿勢を示した形です。
この措置命令が下された背景には、消費者の判断に影響を与える可能性がある口コミ表示やレビューの不正操作に対する懸念がありました。本記事では、今回の措置命令の具体的な内容やその問題点、さらに今後の企業がどのような点に注意すべきかについて詳しく解説していきます。
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