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化粧品を取り巻くルール
化粧品には薬機法以外にも注意しなくてはいけないルールがあります。
この他に日本化粧品工業会の『化粧品等の適正広告ガイドライン』など、これらすべてを守って初めて、正しい化粧品の広告といえるのです。
薬機法における化粧品広告のルールについて
化粧品の広告や販売では、薬機法(旧薬事法)のルールを遵守することが非常に重要です。薬機法は、医薬品や医療機器、化粧品の製造・販売・広告に関するルールを定め、消費者の健康と安全を守るための法律です。
薬機法によるルール
薬機法は、消費者が安全で効果的な化粧品を使用できるようにするための基準を設けています。以下に、化粧品の広告や販売における主要なポイントを解説します。
①虚偽・誇大広告の禁止
薬機法第66条は、虚偽または誇大な広告を禁止しています。これは、消費者に誤解を与えないための重要な規定です。以下のような具体例があります。
- 製造方法に関する誇大表現の禁止
「最高の技術」や「家伝の秘法」など、実際とは異なる誇大な表現を使うことはできません。
- 成分に関する虚偽表現の禁止
実際の成分やその効果、安全性について誤解を招く表現は禁じられています。
- 効能効果・安全性の保証の禁止
「根治」や「全快する」、「副作用の心配はない」など、効能効果や安全性を確実に保証する表現は認められません。
②医薬品と誤認される表現の禁止
化粧品の広告において、製品が医薬品であるかのように誤解される表現を使用することは禁じられています。例えば、「治療する」「治す」などの表現は、医薬品にのみ許されるものであり、化粧品広告では使用できません。
③未承認効能の表現の禁止
化粧品の効能効果について、未承認の効果を謳うことはできません。例えば、化粧品が実際に持つ効果を超えるような表現や、科学的根拠がない効果を謳うことは禁じられています。
④医薬関係者の推薦表現の禁止
医師や薬剤師、美容師などの専門家が推薦しているかのような表現は、消費者に誤解を与える可能性があるため禁止されています。
⑤体験談の使用制限
使用者の体験談や感謝状などは、効能効果や安全性を保証するかのような誤解を招かないよう注意が必要です。具体的な効果を謳うような体験談は避けるべきです。
⑥使用前後の写真の使用制限
使用前後の写真を用いた表現は、承認された効能効果を超える誤解を与える可能性があるため、慎重な取り扱いが求められます。
⑦臨床データや実験例の使用制限
一般向けの広告において臨床データや実験結果を示すことは、消費者に誤解を与えるおそれがあるため、原則として禁止されています。
⑧他社製品の誹謗広告の禁止
他社製品の品質や効能を貶めるような表現は避ける必要があります。これは、健全な市場競争を維持するための重要なルールです。
このように、薬機法は禁止事項が多いため、伝えたいことを上手に表現できないといったお悩みを伺うことが多いです。そこで、薬事法広告研究所では、薬機法を遵守しつつ、商品の強みを活かした表現を作るサポートをしています。
特定商取引法における化粧品広告のルールについて
化粧品の広告や販売には、薬機法だけでなく特定商取引法(特商法)も関係してきます。特商法は、消費者の利益を保護するための法律であり、特に通信販売や訪問販売において適用されます。
特定商取引法によるルール
特商法は、事業者と消費者との取引における不公正な取引を防ぎ、消費者を保護することを目的としています。以下に、特商法が化粧品の広告や販売にどのように適用されるかを具体的に示します。
①誇大広告の禁止
特商法では、消費者を誤解させるような虚偽や誇大な広告を禁止しています。例えば、「使用後すぐに若返る」といった事実に基づかない誇大な表現は違法となります。
②返品・キャンセルポリシーの明示
通信販売においては、返品やキャンセルの条件を明確に表示する義務があります。これには、返品可能期間や返品時の送料負担についての情報が含まれます。
③不実告知の禁止
商品やサービスについて、実際の内容と異なる情報を提供することは禁じられています。例えば、成分や効果について虚偽の説明をすることは違法です。
④クーリングオフ制度の適用
訪問販売や電話勧誘販売などにおいては、契約後一定期間内であれば無条件で契約を解除できるクーリングオフ制度が適用されます。この制度により、消費者は冷静に考える時間を確保できます。
⑤広告の表示義務
通信販売では、商品の価格、送料、支払い方法、引渡し時期などの重要な情報を広告に明示する義務があります。また、事業者の名称、所在地、連絡先も明示する必要があります。
⑥個人情報の保護
消費者から取得した個人情報の取り扱いについても、適切な管理が求められます。特商法では、個人情報の利用目的を明確にし、不正利用を防ぐための措置を講じることが求められます。
景品表示法における化粧品広告のルールについて
化粧品の広告や販売には、薬機法や特定商取引法だけでなく、景品表示法(景表法)も重要な役割を果たしています。景表法は、消費者に誤解を与える表示や不当な景品提供を防ぎ、公正な競争を促進することを目的とした法律です。
景品表示法によるルール
景表法は、消費者が正確な情報に基づいて商品やサービスを選択できるようにするため、不当な表示や過大な景品提供を規制しています。以下に、化粧品の広告や販売に関する主要なポイントを示します。
①不当表示の禁止
景表法では、不当表示を「優良誤認表示」と「有利誤認表示」に分けて規制しています。
- 優良誤認表示の禁止
商品やサービスの品質、規格、その他の内容について、実際よりも著しく優良であると誤認させる表示は禁じられています。例えば、「この化粧品を使えばすぐにシワが消える」といった、科学的根拠がない効果を謳う表現は不当表示とみなされます。
- 有利誤認表示の禁止
価格や取引条件について、実際よりも著しく有利であると誤認させる表示は禁じられています。例えば、「今なら50%オフ」と謳いながら、実際には元の価格を引き上げて割引を装うような表示は違法です。
②不当な景品提供の禁止
景表法では、消費者に対する景品提供についても規制があります。不当な景品提供とは、取引の公正を損ない、または不当に顧客を誘引する景品を提供することを指します。
- 総付景品の規制
一定の取引をした消費者全員に景品を提供する場合、その景品の価値には制限があります。例えば、取引額が5,000円未満の場合、景品の価値は200円以下でなければなりません。
- 懸賞景品の規制
抽選やコンテストで提供する景品についても価値の上限が設定されています。取引額が5,000円未満の場合、景品の価値は取引額の20倍以下、または100,000円以下のいずれか低い方となります。
③合理的な根拠の提示
広告で謳われている内容について、合理的な根拠が求められます。合理的な根拠がない表示は、景表法違反となります。例えば、「この化粧品は臨床試験で効果が証明されています」といった表示には、その裏付けとなるデータや資料が必要です。
④告示基準の遵守
景表法には特定の商品やサービスに関する告示基準が定められており、化粧品もその対象となっています。告示基準に従った表示が求められます。
医薬品等適正広告基準と広告
化粧品の広告を行う際には、薬機法(旧薬事法)だけでなく、医薬品等適正広告基準も守らなければなりません。この基準は、医薬品、医薬部外品、化粧品の広告が適正に行われるように規定されており、消費者に対して誤解を与えることのない正確な情報提供を目的としています。
医薬品等適正広告基準によるルール
虚偽・誇大広告等の禁止を定めた薬機法第66条の具体的な解釈を示したものが、「医薬品等適正広告基準」です。その中でも、特に化粧品・医薬部外品の広告表現に関係が深い部分を抜粋しました。
①製造方法の事実に反する認識を与える誉め上げの禁止
2 製造方法関係
医薬品等の製造方法について実際の製造方法と異なる表現又はその優秀性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現をしてはならない。
<共通>
(1)製造方法等の優秀性について
本項は、製造方法について広告する場合の表現の範囲を示したものである。
製造方法について「最高の技術」、「最先端の製造方法」等最大級の表現又は「近代科学の枠を集めた製造方法」、「理想的な製造方法」、「家伝の秘法により作られた…」等最大級の表現に類する表現は、その優秀性について事実に反して誇大に誤認させるおそれがあるため認められない。
②成分の事実に反する認識を与える誉め上げの禁止
第4(基準)3(3)医薬品等の成分等及び医療機器の原材料等についての表現の範囲
医薬品等の成分及びその分量又は本質等並びに医療機器の原材料、形状、構造及び原理について、承認書等への記載の有無にかかわらず、虚偽の表現、不正確な表現等を用い効能効果等又は安全性について事実に反する認識を得させるおそれのある広告をしてはならない。
③効能効果・安全性の保証の禁止
第4(基準)3(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
<共通>
(1)効能効果等又は安全性の保証表現について
例えば胃腸薬の広告で胃弱、胃酸過多等の適応症をあげ、それが「根治」、「全快する」等又は「安全性は確認済み」、「副作用の心配はない」等の表現を用い、疾病の要因、患者の性別、年齢等の如何を問わず効能効果が確実であること又は安全であることを保証するような表現は認められない。なお、効能効果等又は安全性を保証する表現については、明示的、暗示的を問わず認められない。
④医薬関係者の推薦表現の禁止
第4(基準)10 医薬関係者等の推せん
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。
<共通>
(1)医薬関係者の推せんについて
本項は、医薬品等の推せん広告等は、一般消費者の医薬品等に係る認識に与える影響が大きいことに鑑み、一定の場合を除き、例え事実であったとしても不適当とする趣旨である。「公認」には、法による承認及び許可等も含まれる。また、「特別の場合」とは、市町村がそ族昆虫駆除事業を行うに際して特定の殺虫剤等の使用を住民に推せんする場合である。なお、本項は美容師等が店頭販売において化粧品の使用方法の実演を行う場合等を禁止する趣旨ではない。(2)推せん等の行為が事実でない場合について
推せん等の行為が事実でない場合は、法第66 条第2項に抵触する。(3)特許について
特許に関する表現は、事実であっても本項に抵触し、事実でない場合は虚偽広告として取扱う。なお、特許に関する権利の侵害防止等特殊の目的で行う広告は、医薬品の広告と明確に分離して行うこと。(特許に関しては表示との取扱いの相違に注意:「特許の表示について」(昭和39 年10 月30 日薬監第309 号厚生省薬務局監視課長通知))(4)「公務所、学校、学会を含む団体」の範囲について
「公務所、学校、学会を含む団体」の範囲は、厳格な意味の医薬関係に限定されない。(5)厚生労働省認可(許可・承認等)等の表現について
厚生労働省認可(許可・承認等)、経済産業省認可(許可)等の表現も本項に抵触する。
⑤効能効果や安全性を示す体験談の不可
第4(基準)3(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
<共通>
(5)使用体験談等について
愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者に対し効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため以下の場合を除き行ってはならない。なお、いずれの場合も過度な表現や保証的な表現とならないよう注意すること。①目薬、外皮用剤及び化粧品等の広告で使用感を説明する場合
ただし、使用感のみを特に強調する広告は、消費者に当該製品の使用目的を誤らせるおそれがあるため行わないこと。②タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合
⇒化粧品効能として標ぼう可能な56の効能効果であってもNGですが、「さっぱりとした使い心地」「使用後もべたつきません。」などの使用感については体験談でも標ぼう可能です。
⑥使用前、使用後等図画や写真の使用
第4(基準)3(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
<共通>
(4)図面、写真等について
使用前、後に関わらず図面、写真等による表現については、承認等外の効能効果等を想起させるもの、効果発現までの時間及び効果持続時間の保証となるもの又は安全性の保証表現となるものは認められない。(6)身体への浸透シーン等について
医薬品等が身体に浸透する場面等をアニメーション、模型などを用いて表現する場合は、特に効能効果等又は安全性に関する虚偽又は誇大な表現とならないよう十分に注意すること。また、アニメーションや写真を用いて作用機序を単に説明する場合であっても、効能効果又は安全性の保証的表現にならないよう注意すること。(7)疾病部分の炎症等が消える場面の表現について
テレビ広告、ウェブサイト等で用いる、画面中の模式図、アニメーション等については、効能効果の保証的表現とならないよう留意すること。
⑦臨床データや実験例の使用不可
第4(基準)3(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
<共通>
(3)臨床データ等の例示について
一般向けの広告にあっては、臨床データや実験例等を例示することは消費者に対して説明不足となり、かえって効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため原則として行わないこと。
⑧他社の製品等に関して、誹謗広告となるような表現
第4(基準)9 他社の製品の誹謗広告の制限
医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない。<共通>
(1)誹謗広告について
本項に抵触する表現例としては、次のようなものがある。
①他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合
例:「他社の口紅は流行おくれのものばかりである。」
②他社の製品の内容について事実を表現した場合
例:「どこでもまだ××式製造方法です。」(2)「比較広告」について
① 漠然と比較する場合であっても、本基準第4の3(5)「効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止」に抵触するおそれがあるため注意すること。
② 製品同士の比較広告を行う場合は、自社製品の範囲で、その対照製品の名称を明示する場合に限定し、明示的、暗示的を問わず他社製品との比較広告は行わないこと。この場合でも説明不足にならないよう十分に注意すること。
まとめ
化粧品広告では、薬機法以外に、特定商取引法、景品表示法、医薬品等適正広告基準等の遵守が必要です。
薬機法では虚偽・誇大広告の禁止、効能効果や安全性の保証の禁止、医薬関係者の推薦表現の禁止などが規定されています。特定商取引法では、誇大広告の禁止や返品・キャンセルポリシーの明示を義務付け、景表法は不当表示や過大な景品提供を規制します。さらに、医薬品等適正広告基準では、製造方法や成分に関する虚偽表現、使用前後の写真の使用制限など詳細なルールを定めています。
これらを遵守することで、消費者に対して信頼性の高い情報を提供し、公正な競争を維持することができるので、これらを遵守した広告を心がけましょう。
この記事から学んでおきたい関連知識
化粧品を販売する際は、薬機法という法律が関わってきます。その他にも、特定商取引法(特商法)や景品表示法(景表法)といった法律についての理解も必要です。もし、これらの法律に違反をしてしまった場合、消費者からの信用を失ってしまうことにもなりかねません。
そのため、化粧品の広告を制作する際は、単に商品の魅力を伝えるだけでなく、様々な法律やガイドラインに準拠する必要があります。そこで、本記事では、化粧品広告において、薬機法をはじめとした各法律における重要なルールについて解説します。
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